偽りの先生、幾千の涙
そうこうしているうちに、2人分のバニラアイスがやって来た。
安物のアイスなのは丸分かりだけど、花音ちゃんは美味しそうにそれを食べ始めた。
「まあ何にしても、気を付けなよ。
巻き込まれちゃうかもしれないよ。」
俺とこうやって話している時点で、しっかりと巻き込まれているのだけれども。
「分かった。
ちょっと気を付けてみる。」
気を付け方なんて全く分かっていないだろうに、素直に返事をするのがおかしかった。
「ああ。
その方がいい。」
俺は溶け始めたアイスを一気に口に入れた。
冷たさが舌の上に広がり、心地よいと言うよりは攻撃されているような気分になった。
それからお会計を済ませて、ファミレスを出る。
「美味しかった!
貴久君、誘ってくれてありがとう。」
「どういたしまして。
そうだ、ここの階段急だから気を付…」
時既に遅し。
前のめりに傾く花音ちゃんを見て、俺は反射的に手を伸ばした。
間に合ったようで、俺は花音ちゃんの二の腕に触れると、ぐっとこちらに引き寄せた。