偽りの先生、幾千の涙
「職員室だと狭いのですか?」
誰も来ない応接室と、謎のタブレット…何をするのかとても気になる。
「狭いというか…プライバシー確保のため?
ほら、7月の頭に正式な個人面談があるから、その準備というか、整理のために。
準備をしているところに誰か来られたら慌てるし、時間かかりそうだから。」
他の子に向けるのと全く同じ笑みを私に向ける。
普段、私を見る時とは違う顔だ。
なるほど、こんなに綺麗に真正面から微笑まれるのなら、皆が黄色い声を上げるのも分かる。
そうなんだって納得させられそうになる。
でも、そんな顔を私にも向けるという事はどういう事か。
私にこれ以上踏み込んでほしくないからであり、遠ざけたいと思っているから。
どうする?ここで引き下がって、私がタブレット端末に興味を示していないフリをする?
それともここで攻め込んじゃおうかな。
「先生、1つだけ我が儘言ってもいいですか?」
精一杯可愛く、でも礼儀正しく、上目遣いでお願いしてみた。
だって踏み込まなかったらここで終わりだけど、上手くいったら調べられる。
それに断られたら…それこそ見られたくない事をしているという証拠になる。
プライバシーなんて理由はどうせ嘘なんだから。
「…聞ける事なら。」
「私も応接室に入れてもらえませんか?
勿論、先生のお仕事の邪魔はしませんし、何をしているかも見ません。
人のあまりいないところで勉強したいんです。
出来れば椅子と冷房のあるところで。」