偽りの先生、幾千の涙
それにしても、それが本当に伊藤って人なのかな?
そんなイケメンが担任って都合良すぎすというか、出来すぎた青春にしか思えない。
ペラっと楽譜を巡りながら、耳をそちらに集中する。
皆がその話に興味を持ったんだろう。
声の種類がどんどん増えていき、花音ちゃんの声まで聞こえてきた。
「あとちょっとでチャイムなるよ!
楽しみだな。
あ、でもこれだけ期待してて、シワシワのお爺ちゃんが来たらどうしよう。」
「国木田さん、止めてよ。
だとしてももう少し夢見ていていじゃない。」
いや、どう考えてもシワシワのお爺ちゃんの方が可能性高いよ。
そう考えていたけれど、珍しく私の考えは外れたようだ。
チャイムと共に入って来たのは、さっきの話の特徴をそのまま持った男が現れた。
色めき立った教室を眺めるのは居心地が悪い。
真ん中らへんに座っていると、前方のざわめきだけでなく、後方からの熱狂も感じるから落ち着かない。
だが急に私も落ち着けなくなった。
格好とか髪の感じとか全然違うけど、先週に見た男だ。
ちょっと待って、担任が同じマンションに住んでいるとか凄く困るっていうか、この前とキャラが違う事の説明しないといけなくない。
どころか…あの夜の事、絶対に聞かれるよね。
かなり面倒な事になった。