偽りの先生、幾千の涙
「他には何かあったか?」
「榎本悟朗の帰国に関連するけど、榎本果穂が今日は帰ろうとしなかった。
こっちの業務をするために、応接室を借りたけど、椅子あるし、冷房あるし、人いないから入れてくれって。」
「入れたのか?」
「入れたよ。
絶対にこっち向くなって言って。
タブレットは見られていないから大丈夫。」
「それならいいんたが。
…他にはないか?」
あとは…俺は考えを巡らせる。
強いて言えば、国木田花音の様子が最近おかしい。
俺に寄ってくるタイプではなかったが、最近は視線を合わそうとすると逸らすし、俺が挨拶するとぎこちなく返し、すぐにその場を去ろうとする。
これが国木田花音でなければ、俺のことを空きになったのかと推測して終わるところだが、そういうわけにはいかない。
海斗の報告だと、国木田花音の親が俺について調べている。
でも報告を受けた頃はいつも通りだったし、俺も学校から何も言われていないから、様子を窺っていた
だが、それも限界かもしれない。
その事を話すと、父さんは溜め息を吐いた。
「1学期いっぱいが限度か。」
俺もそう思っていた。
少なくとも、俺の今の任務はそう長くは出来ない。
せっかく人を車で轢いてまで掴んだチャンスだが、夏休みの講習に出られるかどうか危うい。