偽りの先生、幾千の涙


俺に今すぐ言えない事とは何だろう。


俺が聞いたら、今の仕事に影響が出る事だろうか。


それとも、実はこの復讐劇には他にも仲間がいて、そっちに先に言わないといけないとか。


…海斗には先に教えるのだろうか。


考えが纏まらず、俺は海斗に電話を掛けた。


何か先に掴んだら教えてほしいと言うために。


でもこんな時に限って電話に出なくて、どうせ女遊びでもしているのだろうと諦める。


「…漸く、終わるのか。」


相変わらず雑音しか聞こえないイヤホンに耳を傾けながら、呟く。


ずっと憎く思ってきた。


俺の家族を奪った榎本悟郎を。


だから今まで頑張ってきた、色んな事を勉強して、悪い事もして、教員になって潜入して…もうこんな事をしなくて済むようになる。


復讐が終われば、父さんも海斗も俺も、普通の人生に戻れるはずだ。


海斗なんてまだ高校生だから、今からやり直せば、俺よりも遥かに真っ当に生きられる。


そうなってほしい、だが…父さんはどのように復讐するのだろう?


父さんの口ぶりから察するに、榎本悟郎が日本に帰って来るのを態々待っていた。


日本で復讐するのが効果的なのか、それとも海外に運べないものを使うとか?


どれも違う気がする。


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