偽りの先生、幾千の涙
6つ目の嘘 綱渡りの告白
side by 先生
「おはようございます!」
「伊藤先生、おはようございます!
…伊藤先生?」
名前を2度呼ばれ、俺は漸く挨拶された事に気付く。
「ああ、おはよう。」
素っ気ない返事をして、俺は職員室へ向かう。
誰かも分からない女子生徒なんて、今はどうでもいい。
その日の俺は、榎本果穂から来たメールの事で頭がいっぱいだった。
相談したい事?そんなわけあるか、榎本果穂は気付いている。
気付かれている事は分かっていたが、こんなに早くにコンタクトを取ってくるとは思わなかった。
言い訳なんてしようがない。
榎本果穂の事だから、盗聴器を撮って、証拠として残している可能性かある。
スマホ1つ壊したところで、他の媒体にも残しているだろうしな。
それにしても…榎本果穂は何がしたいのだろうか?
俺をこの学校から追い出すのが目的だとしたら、他にやりようがある。
態々連絡を寄越したという事は、何らかの取引をするつもりなのだろう。