偽りの先生、幾千の涙


榎本果穂は家に来るのは都合がいい。


もしもの時は可哀相だけど、殺しちゃえばいいんだ。


温室育ちのお嬢様と俺では体力を考えても、俺の方が有利だ。


無事に帰れる自信でもあるのか?


爆弾を用意できる男の娘だから、何かしら用意はしてくるだろうけど…


「だって先生、初めてお会いした時に仰ったじゃないですか。
話ぐらい聞いてあげるから家に来いって。」


…ああ、言ったさ、やっぱりこの子は頭が良い。


どうして家に来たいのかは分からないが、俺がちゃんと断る前にこんな事言ってくるんだから、何かしらの作戦があるのだろう。


「でも今日はダメ。
仕事の後に出掛けるから。
…明日でもいい?」


「…近々ならいつでも。
でも出来れば今週中にお願いできますか?
学校でも、お家でも、どちらでも構いませんから。
でも他の人には聞かれたくない話なので。」


「なら…明後の放課後、学校で。
補講ないよね?」


「ええ。
ではそれでお願いいたします。」


榎本果穂は自身ありげに微笑むと、教室に戻っていく。


俺はフェイクで用意したファイルを持って、職員室に戻った。


明後日にしたのは、榎本悟郎が帰ってこない日だからだ。


今朝、榎本悟郎が仕事関係の人と電話で話しているのを聞いた。


家に今日来られて、途中で父親の方まで来られたら迷惑だからな…父さんの計画に影響が出る事は避けなければ。


さて…明後日はどうしようか。


俺はそんな事ばかりを考えて、2日間過ごした。


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