偽りの先生、幾千の涙
爆発するなら、父親が1人でいる時にしてほしいわ。
これ以上あいつのせいで誰かが死ぬのなんてダメよ。
「…でも爆弾ってこんなに小さいもの?」
「爆弾かどうかは分かりません。
もしかしたら…触ったら電流が流れるもかもしれませんし…盗聴器かもしれませんね。」
盗聴器と言った瞬間、伊藤の目が動かなくなった。
目が泳いでも怪しいが、こんなにじっとしてられるのも逆に不自然に思えてくる。
盗聴器という路線で間違いはなさそうね。
あとは…伊藤から本音を聞き出せるかどうか。
「盗聴器なんて、また物騒な事を言うね。
お父様は何て仰ってるんだい?」
平然と言ってのける伊藤に、私は俯く。
「実は…父には話していないんです。」
態と暗い顔をして、伊藤に様子を伺わせる。
伊藤がこちらの顔を覗き込むまでは、絶対に顔を上げない。
「それは…その状況で、どうして俺に話すんだ?
相談してくれるのは嬉しいが、お父様にまずは報告すべきでは?」
「いいんです、父には言わなくて。」
少し強めに言ってみる。
普通の大人なら、大人しい私がこんな事を言い出したらビックリするだろう。
でも伊藤はさして驚かないと思う、私がどんな人間か分かっているだろうから。