偽りの先生、幾千の涙
理性ならまだある。
そっちがその気なら、私だって考えがある。
「お家なら誰にも邪魔されないで、ゆっくりお話し出来ますもの。
こんな事言ったら、もうお家には呼んでいただけませんか?」
伊藤が数度瞬きする。
こう来るなんて思ってなかったかしら?
「…来てもいいよ、榎本さんが来たい時にね。」
乗ってくる事は想定内だ。
私に近付く程、伊藤にとっては有利なはずだから。
「ありがとうございます。」
自然と口角が上がる。
多分今、伊藤と全く同じ笑顔をしている。
元の計画とは全く違う方向に向かっているけど、これはこれでいい。
目的達成のために、計画を練り直すなんて当たり前でしょ?
「…逆に、榎本さんのお宅にもお邪魔してもいいかな?
勿論、嫌ならいいよ。」
「今からですか?」
「まさか。
榎本さんが都合が良い時でいいよ。
放課後でも休日でも。」
「そう言ってもらえると嬉しいです。」