偽りの先生、幾千の涙
あそこまで小さなものが爆発しても、そこまで被害は大きくない。
それに目的は、破壊ではなく、証拠隠滅だろう。
「でも放っておくわけにもいかないよね。」
「ええ。
誰が何のために…」
伊藤がって事は確実なんだけど、目的に関しては確信に近い推測だ。
「…でも、お父様が帰国した日には付いてたんだよね?
お父様を傷付けるのが目的なら、もう既に作動してるんじゃないかな。
爆発はしないと思う。」
「確かに…なら…盗聴器とか?」
盗聴器という単語を出す瞬間、顔を上げて伊藤の表情を見る。
顔色1つ変わっていないあたり、やはり逆に怪しい。
普通の人なら、驚いた顔をするはずだ。
「でも盗聴器なら、果穂の話も聞かれてるんじゃ…」
「さあ、どうでしょう。
私、基本的にあまり話さないですし、電話もしませんから。」
分かってるはずでしょ、少なくとも家での様子は聞いてるはずだから。
「でも…もし狙われてるのが父なら、その方と一度お話ししてみたいわ。」
「どうして?」
「場合によっては協力しますもの。」