偽りの先生、幾千の涙
「わりと真剣なお願いなんですけど。」
「真剣なのは伝わったよ。
ただ…もっと無茶な要求をしてくると思ってたから。
そんな簡単でメルヘンな事でいいのかって。」
「いいんです。」
「分かった分かった。
約束するから、お仕事よろしく。」
「…」
伊藤の約束なんて信じられない。
でもここは伊藤に協力する以外に方法はない。
「よろしくお願いします。」
嫌々手を出したら、向こうはにんまりと笑って、私の手を握ってきた。
勿論、黙って従う気なんてサラサラない。
今日は私の準備不足でこうなったけど、逆に伊藤に近付けたと考えれば、これからの行動はいくらでも考えられる。
伊藤も父親共々、社会から葬ってやる。
「…というわけで、今日はここに泊まっていいですか?」
「…え?」
「せっかくですもの。
いいですよね、貴久さん?」
隙間なく閉められたカーテン、白い電気と、ちょっと良さそうなソファ
気持ち悪い程片付けられた部屋で、私は可愛く言ってみる。