偽りの先生、幾千の涙
伊藤は何がしたかったんだろうか?
毒入りのご飯でも食べさせて、殺す気だったとか?
それにしては殺気がないような…
まあいいや、危険物は回避できたわけだし。
その後も伊藤はイヤホンで何かを聞き続けていいて、気付けば夜中も2時に近かった。
伊藤は余裕の表情で起きているが、私は眠い。
いつもこんな時間まで起きていないのだ。
そんな私の気持ちを知ってか知らぬか、伊藤が私の顔を覗き込んできた。
「眠い?」
「…そりゃ眠いですよ。
私、朝方なんです。」
「俺の事なんで気にしないで寝ていいよ。
ベッドはあっちの部屋にあるから、使っていいし…それともあれ?
同時に寝ないと信用できない?」
どうやら私の気持ちを完全に理解しているらしい。
返事をするのが面倒で頷くと、伊藤はまた困ったように溜め息を吐く。
「俺、毎日3時にならないと寝ないんだけど、頑張って起きておく?
それとも先に寝る?
怖いなら今から家に帰ってもいいんだよ?」
「3時まで起きます。」
そうは言ったものの、瞼が重くて仕方ない。
普通に起きていられるこいつが恨めしく思えてくる。
結局私はそのまま寝てしまって、気付いたら日が昇っていた。