偽りの先生、幾千の涙
座っていたはずなのに、ソファに横たわっていて、体の上にはタオルケットが掛かっている。
伊藤がしてくれた?
そんな疑問を抱いていると、部屋の奥から声が聞こえる。
「起きた?」
朝の支度が殆ど終わっているらしい伊藤は、昨日と違うスーツを来ていて、眠そうな表情もせずにコーヒーを飲んでいる。
「…おはようございます。」
「おはよう。
今、6時半だけど、自分の家に戻る?
それとも学校サボっちゃう?」
時計を見ると、確かにそれぐらいの時間だ。
お弁当を作る時間はないけど、シャワーを浴びて、着替える時間ならある。
「サボりませんよ。
戻ります。
…泊めていただきありがとうございました。」
私は眠いながらも、しっかりと歩いて玄関まで向かう。
鍵を閉めるためか、私が何処かを覗かないためかは分からないけど、伊藤も後ろからついてくる。
「じゃあまた学校で。」
「…今日もよろしくお願いいたします。」
私は頭を下げると、部屋を出た。
そこから急いで自宅に戻り、シャワーを浴びた。
朝ご飯は抜いて、髪をセットして、日焼け止めを塗って、着替えて…準備が出来たのは、いつもよりも少し遅い時間だった。