偽りの先生、幾千の涙


「花音ちゃん、お昼ご飯は食べないの?」


「え?
あ!
食べるよ!
なんかぼーっとしてた。」


伊藤先生と果穂ちゃんの事を考えていたら、箸が止まっていた。


でもなんか心配で、お弁当を美味しく食べる事は出来なかった。


ママからはあれから何も聞かされていない。


大学の卒業名簿には伊藤貴久という名前はなかった、ただそれだけ。


嘘、もう1つだけ言われた。


この事は果穂ちゃんには言ってはいけない、と。


理由は教えてくれなかったけど、とにかくまだ果穂ちゃんには言えてない。 


本当は今すぐにでも言いたいんだけど、きっと言ってはいけない理由があって、それはあたしには理解てきないんだと思う。


でもそうこうしていると、伊藤先生をあんなに警戒していた会話ちゃんだったのに、いつの間にか伊藤先生と仲良くなっている気がする。


疑いは晴れたのかな?


でも果穂ちゃんが騙されているのかもしれない。


いや、伊藤先生は本当に良い人だと思う。


でも、あの日に貴久君って男の子が言っていた言葉が頭を過る。


疑わなきゃって…


あたし、どうしたらいいんだろう。


考えても考えても、全く分からない。


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