偽りの先生、幾千の涙
ベッドの中で寝返りを打つ。
保健室に来てどれぐらい時間が経ったのか分からない。
午後の授業は始まってるけど…あ、スマホは教室に置いてきちゃった。
そろそろ戻ろうかな…でも、戻っても授業に集中出来そうにないし…どうしよう。
迷っていたら、5時間目の終わりを告げるチャイムが鳴った。
…仮病で休んじゃった。
ちょっと気まずくて、逆に帰りづらくなる。
ネガティブな思考が繰り返される中、保健室から声が聞こえた。
「すいません、国木田がお世話になってると伺ったんですが…」
「国木田さんならベッドで休んでもらっています。
寝ているかもしれませんけど、様子を見てきましょうか?」
「いえ…問題なければ、僕が様子を見てもいいですか?」
「構いませんよ。
どうぞ。」
…保健室の先生、さっきと明らかに声が違う。
あたしや果穂ちゃんと話している時よりも声が高い。
やっぱり伊藤先生って人気なんだなって思う。
そう考えていたら、ベッドを囲むカーテンがそっと開けられた。
保健室の先生は同伴してなくて、伊藤先生だけがそこに立っていた。