偽りの先生、幾千の涙


「国木田さん、起きていて大丈夫なのか?」


「え…はい。
もう大丈夫なので、そろそろ教室に戻ろうかと思っていた頃です。」


声がどんどん小さくなる。


大丈夫も何も、最初から元気なのだ。


「そうか、それなら安心した。
さっきの授業いなくて気になったから、様子を見に来たんだ。」


そういえば、さっきの授業って伊藤先生の政治経済だった。


「すいません。
わざわざ来ていただいて。」


「いいんだ。
元気なのは分かったし。
次の授業出れるか?
大丈夫と言っていたが、体調が悪いなら帰ってもいんだぞ。」


優しい声で言われると、罪悪感が増すばかりだった。


でもっこで仮病だったなんて言えなくて、あたしは必至で取り繕う。


「いえ!
本当に大丈夫なんで!
教室戻ります!」


あたしはがばっと起き上がると、急いでベッドから下りる。


「そんなに慌てなくてもいいのに。」


「でも、次の授業も始まっちゃうんで!」


「国木田さんは真面目だな。
ちょっとぐらい遅れても大丈夫だって。
次、現代文だろ?
国木田さん、国語は得意なんだから大丈夫だって。
ほら、悪化するから慌てない。」


慌てるなって言われると、余計に慌ててしまうのだ。


でもどうしたらいいのか分からなくて、動けなくなる。


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