偽りの先生、幾千の涙


だって目の前にいる人が分からないんだもん。


伊藤先生は優しいと思う。


今だって心配して来てくれたわけだし、いつも全然怖くないし、相談とかちゃんと乗ってくれるって皆言っている。


でも果穂ちゃんは怪しいって言ってたし、お母さんが調べてくれた事も気になる。


何だろう、伊藤先生ってどんな人なの?


いつもの…今目の前にいる伊藤先生は、伊藤先生じゃないの?


「ごめん、逆に混乱されちゃったかな?」


気が付いたら、真正面に伊藤先生の顔があった。


目の高さは合わせてくれていて、距離はベッドの幅と同じ。


いつもと同じ顔をしている。


「それは…大丈夫です。
あたしが慌ててるだけ…ただ…」


確かめたい。


確かめたいけど、どう確かめたらいいの?


もしお母さんが調べた事間が間違いなら、伊藤先生は疑惑を否定する。


でも伊藤先生が嘘を吐いていたとしても、同じく否定する。


ダメだ、あたしには出来ない。


ママやパパやお兄ちゃんみたいに賢くない。


でも…


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