偽りの先生、幾千の涙


出来ないし、どうしたらいいか分からないけど、確かめなきゃ。


「伊藤先生!」


「…どうした?」


「先生って嘘を吐いた事、ありますか?」


背中に汗が流れる。


重なって反らせない視線が怖い。


威圧感じゃないけど、何か凄く重みを感じる。


今までに感じた事のないタイプの緊張感だ。


「あるよ。
国木田さんは?」


「え?
あたしですか?」


あたしも…ある。


最近、2回くらい嘘を吐いた。


1回は今年の始業式、果穂ちゃんと御離ししたいがために、相談があるって言ってお家に行った。


そして…2回目…貴久君とご飯に行った時だ。


あの日、いつも通り授業があったってママに言った。


…そうだよね、人間なんだから、ましてや伊藤先生は年上なんだから、嘘を吐いた事ぐらいあるよね。


何聞いてるんだろう、あたし。


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