偽りの先生、幾千の涙
「…あります。」
「そうだよな。
何か悩み事か?
俺で良ければ、話聞くよ。」
「…ありがとうございます。
でも、大した事ないんです。」
「無理するな?」
「はい。
ありがとうございます。
…あ!
チャイム鳴っちゃう!
先生、あたし教室に戻ります!」
あたしは逃げるように保健室から、伊藤先生から離れていった。
果穂ちゃんは伊藤先生の何をもって怪しいと言ったんだろう。
普通に優しいし、話せない内容だったから言わなかったけど、他の事なら相談出来た。
あたしが騙されてるのかな?
果穂ちゃんみたいに賢くないし、勘も良くないから、やっぱりよく分からない。
何が本当の事で、何が間違っているんだろう。
いつもなら、果穂ちゃんが言っている事が正しいってなるけど、伊藤先生が悪い人だなんて想像出来なかったんだ。
…貴久君に言ったら、甘いとか言われそうだけど。
…貴久君、元気かな。
また会えるかな、会いたいな…会ってまたご飯食べて、色々お話ししたいな。
貴久君といる時間、楽しかったもん。
走って教室まで行くと、ギリギリ授業に間に合った。
皆が心配して声をかけてくれて、果穂ちゃんにノートを貸してもらって、何事もなく次の授業が行われた。