偽りの先生、幾千の涙
side by 果穂
最近、花音ちゃんの様子がおかしい。
悩み事があるのは丸分かりで、どうしたのか聞いても全然教えない。
頼み事の報告も上がってこないし…っていうか、その事に関係する事かな?
その可能性は高いけど、だとしたら私に情報が下りてこないのは、花音ちゃんは何かしら知っているけど、親に口止めされている可能性が高い。
そこは口を割らせたいところだけど…なかなか難しい。
特に、課題が増えた今は自由に動けないのだ。
「果穂、全然勉強してないけどいいのか?」
「大丈夫ですよ。
模試の結果、見ますか?」
「この前見たからいい。」
伊藤の伝書鳩になってしまったがために、とても面倒な事になった。
学校でもちょこちょこ絡んでくる。
私が何かしら言いふらすのを気にしているのかしら。
それに毎日家に呼んでくる。
これに関しては半分私が悪いから、何とも言えないんだけど。
でも伊藤の家で何をするわけでもないし、やる児ともないし…はあ…せめてピアノが欲しい。
そんな私の心情を察したのかは分からないが、伊藤がこんな事を言い出した。
「水仙女子って金余ってるわけ?」
「余ってるんじゃないですか?
寄付金とか多いですし。
どうしてですか?」
「今日、音楽の先生に言われたんだ。
学校でチェロを買ったから、今度弾いてほしいって。
俺以外に誰が弾くんだよって思って。」