偽りの先生、幾千の涙


役立ってもらう?命を犠牲にしてまで?


私は父親の携帯電話を壊してしまいたいという衝動にかられた。


でもしなかった。


壊しても、ダミ声の男の元にはデータが残っているし、お母様があいつのせいで死んでしまった事実は消えない。


代わりに私は朝になるまで泣き続けた。


父親の携帯電話を部屋に戻す事もせず、使用人の安眠を妨害する事も気にせず、泣き叫んで、部屋中の物に当たり散らした。


それでも異様なまでの怒りと憎しみは沸いてくるばかりで、おさまる事はなかった。


少しして、家中の人が私の部屋にやって来た。


何があったのか聞かれても、私は答えなかったから、彼らはほとほと困ってしまっていた。


落ち着かせようと試みるもダメで、何時間も私の部屋にいさせる事になったのは、今でも申し訳なく思う。


結局その日は涙で目が腫れてしまい、学校を休む事になった。


普段なら登校するような時間に、涙は漸く底をついたようで、私が泣き止むと、彼らはそれぞれの仕事に戻っていった。


私はというと、泣き疲れたのと、精神的なダメージのせいで眠ってしまった。


後で聞いた話だが、何度起こしても目覚めず、かなり心配されていたらしい。


長い眠りから覚めた後、私は落ち着きを取り戻していた。


その後、父親の携帯電話に入っていたデータを私のパソコンに転送し、携帯電話は元の場所に戻した。


そして誓ったのだ。


生涯、絶対に父親を許さないと。


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