偽りの先生、幾千の涙
思い出すと、悔しくて涙が出てくる。
お母様は優しかった。
あの男に嫁ぐには勿体ないぐらい、穏やかな人だった。
どうしてお母様が死んで、あの父親のような人間が生きているんだろう。
悲しいや苦しいなんて言葉では表現しきれないものが、答えを求めて体内から溢れてくる。
一つ二つと大きな水滴となったそれは膝の上を濡らしていった。
泣いていても仕方ないとは分かっている。
今なら行動出来るのだ。
期せずして、協力者を得た。
彼は私と違って、情報も物も持っているようだ。
…私は自分の命と引き換えにして成そうとした復讐を、彼は違う方法で遂げようとしている。
乗るしかないのだ、どんな手段を使っても。
私は涙を拭いた。
今すべき事をやらなければならい。
協力者だって完全に信用してはいけないのだ。
彼の事もある程度は調べないといけないし、身の危険を感じたら逃げない。
どうせ死ぬつもりの命だけど、どうせなら目的を達成してから死にたいし、そのため以外に死ぬのは嫌だと今なら思うようになっている。
どうして心変わりしたのかは分からないけど…それが今の正直な気持ちだった。