偽りの先生、幾千の涙
8つ目の嘘 正しくない選択肢
side by 果穂
6月も今日で終わりだ。
明日から期末試験という事で、私の周りにはいつもよりも多くの取り巻きがいる。
「すいません、果穂様。
この問題が答えを見ても分からなくて。」
「果穂様、次は化学を教えていただけると…」
並ぶという概念を知らないのか、それとも常に自分が優先されて当然とでも考えているのか、私の周りは人で溢れかえってる。
それも皆して違う教科の問題集やらノートを持っているから、一度に扱いきれない。
「ごめんなさい。
私も体が一つしかないから、順番にしか出来なくて…とりあえず、最初に予約された数学からやろうかしら。」
そう言うと、他の教科を教えてほしい人も、自分の机から数学の教科書と問題集を取って来る。
まったく…この人達は授業をきちんと聞いているのかしら。
呆れながらも、時間を区切って一問一問教えていけば、感謝の言葉が雨のように降ってくる。
それを教科毎にしていくのだから大変だけれども、これで満足して帰ってくれるならいいわ。
私も遅くに帰宅する言い訳が出来るし。
そんな感じで、いつもより丁寧に教えてあげていく。
最後の問題の解説が終わったところで、私は数時間ぶりに席を立つ。
ずっと座りっぱなしだったから、少し腰が痛い。
伸びをするように手を高く上げると、帰る用意をする女の子達の間をすり抜けて、1人の少女が近づいてくる。