偽りの先生、幾千の涙


「どうしたの、花音ちゃん。
花音ちゃんも何処か分からないところある?」


そういえばさっきまで花音ちゃんの姿は見えなかった。


いつも泣きついてくるのに珍しいと考えていたら、花音ちゃんは首を横に振った。


「違うの。
えっと…ううん、違わない!
違わないけど…」


言葉と言動が一致しない。


違わないと言うが、花音ちゃんは何も手ぶらで来ている。


「えっと…果穂ちゃん、この後ちょっとだけ時間ある?
本当にちょっとだけなの!」


「大丈夫だよ。」


了承すると、花音ちゃんはいつもよりも固い表情で、私の帰り支度を待った。


他の子も目もあるから、なるべく速やかに教室を出る。


笑顔で手を振ると、花音ちゃんは校門の反対側に私を誘導していく。


何があったのかと考えて、ちょうど廊下の曲がり角…視聴覚室と渡り廊下の間くらいで、花音ちゃんは足を止めた。


花音ちゃんに合わせて、私も歩みを止めると、花音ちゃんはキョロキヨロと何度も周りを見渡す。


「誰もいないよ。」


そう言うと、花音ちゃんはハッとした顔で謝ると、もう一度二方向を確認して小さな声で話は始める。


「えっと…あのね、果穂ちゃんにこの前頼まれていた事なんだけど…」


「この前?」


あえてそんな返事をすると、花音ちゃんは困った顔でまた言葉を選ぶ。


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