偽りの先生、幾千の涙
これだけ待たされたんだから、本当はもっと教えてもらえるべきよ。
怒りと苛立ちが体内を血液のように駆け巡る。
私が知りたいのは、そこを入り口としたその先の事でだ。
彼の詳しい経歴や、その家族の事、あとは…あの事故との関わりも聞きたかった。
なのに、花音ちゃんの答えはこれだけで、しかもこれさえも言うのを禁じられていたなんて…使う人間を間違えたわ。
法曹界に親を持つ子にもっと声を掛けるべきだったかしら。
「ごめんね、果穂ちゃん。
あたしは本当にこれしか知らなくて、これさえも本当は教えるなって言われてて…」
「花音ちゃんは悪くないよ。
言いつけを破ってまで教えてくれてありがとう。
もしまた何か分かったら、教えてね。」
花音ちゃんは本当に知らないようだ。
これ以上責めても何も出ないなら、ここで帰すべきだろう。
「果穂ちゃん…あのね…」
「うん?」
「最近、伊藤先生と仲良しだよね?
どうしたの?
大丈夫?
何か弱みを握られちゃったとか?
もし果穂ちゃんが困ってて、訴えたいとかだったら、あたし頼んでみるよ!」
あれ…仲良しって思われてるの?
それは…大成功かな。
私は自分の感情を抑えながら、少しゆっくりめに答える。