偽りの先生、幾千の涙


「仲良しかな?
前程避けていないだけで、仲良くはないんだけど…仲良しに見える?」


「仲良しっていうか…普通に会話してるし。
この前も、一緒に演奏したって聞いたから。
近いっていうか…うーん、ごめん、何て言えば分からないけど。」


「ああ、あれね…演奏の件はたまたま。
伊藤先生、音楽の先生に捕まっちゃったみたいで、通りかかった私がSOSに応じただけ。
でも…花音ちゃんの言う通り、前よりは仲良しかな。
前って、本当に最初の頃と比べてだけど。」


あいつの家に行く仲ですなんて言えないけど、前より距離が近いのは本当。


だって態とそうしているから。


もしそうしていたら、私の身に何かが起こった時に、伊藤が関係しているかもって皆が思ってくれる。


そりゃ、伊藤が父親に復讐してくれる今、私の身に何もないのが一番だ。


でも万が一、私の身に危険が及ぶとして、伊藤に何のお咎めもなかったら嫌よ。


免罪なんて許さないわ。


「…大丈夫なの?
伊藤先生、何か隠してるんだよ?」


「そうね。
でも…花音ちゃん、これ内緒ね。」


私は息を吐くように、間違った情報を花音ちゃんに教える。


「伊藤先生のこと、好きになっちゃったかも。」


笑ってしまいそうになるのを必死に堪える。


懸想なんて私には似合わない。


でもそう言っても、世間的には有りだと思われるでしょ。


女子高生とイケメンのお兄さんなんだから。


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