偽りの先生、幾千の涙
花音ちゃんは間違った事を言っていない。
でも私は嘘を吐く。
「え?今?
関係してないわけじゃないけど、伊藤先生が思考の中心ではなかったかな。
どうして?」
「うーんと、果穂ちゃんっていつも会話のテンポが良いんだけど、今は間があったから、好きかもしれない人のこと考えていたのかなって。」
その言葉に、私は思わず目を見開いてしまう。
「そんなに間が空いていたかしら?」
「少しだけね。」
…好き、ではないと思う。
ただ利用価値ががある大人…それだけだ。
「それで果穂ちゃん…どうする?
調べてもらうの止めた方がいいかな?」
「ううん…それは続けてほしいな。
花音ちゃんが今調べてくれた事が嘘だって言うなら、余計に知りたい。
伊藤先生が本当はどんな人なのか、どうして嘘を吐いているのか。」
それを調べるのは、私の役目だけど、花音ちゃんの家が色々と調べてくれるなら助かる。
どうして情報が降りてこないかは分からないけど…事故と関係しているのかな。
だとしたら、余計に知りたいのだけれども。
「もし教えてもらったら、すぐに果穂ちゃんに言うね!
それまでも危ないって思ったら、すぐに逃げてね!」
「ありがとう。
そうするわ。」
花音ちゃんにお礼を言ってから、私達は家に帰った。
ちらほらと残っている人はいるけれど、学校に残っている人は案外少ない。