偽りの先生、幾千の涙


「ねえ、果穂ちゃん。
もし迷惑じゃなかったら、果穂ちゃんの家に行ってもいい?
ちょっと相談したい事あるの。」


「私は構わないわ。
散らかっているけれど、それでもいいかしら?」


「全然!
急にごめんね!
良かったら、私の家の車で行こう。
果穂ちゃんの家の場所なら分かるだろうし。」


電車に乗るの面倒だから、それはありがたい。


でも花音ちゃんの相談って何?進路相談みたいな?


でもそれなら進路担当の先生に相談したら…まあ何でもいいや。


私、一人暮らしだから、そこは誰にも何にも言われない。


私は花音ちゃんの家の車に乗せてもらって、自宅に行く。


朝の行動で分かると思うけど、私は皆みたいに車で通学なんてしていない。


家に帰っても誰もいない、お手伝いさんも雇っていないし、家族も勿論いない。


家事も全部私がやっていて、正真正銘の一人暮らしだ。


何でそんな生活をしてるかって?


だって家族も父の周りの人も嫌いなんだもん。


父はアメリカで仕事をしているから、家には殆ど帰ってこなくて、本当は私も一緒に来いって言われたけど、日本にいたいって言ったら、あのマンションを与えられた。


残ってもいいけど、ここに住めって。


本当は父になんて頼りたくないけど、帰ってこなかったら向こうに通知されるシステムを取られているから、引っ越すにも引っ越せない。


便利で駅近、眺めも良く、文句のつけどころのない家だから、黙ってそこに住んでいるというわけだ。



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