偽りの先生、幾千の涙
最終的あの父親を殺すのか、一刻も早く死にたいと思える程苦しめるのか、どういう方法で復讐するのか知らないけど…失敗しないでほしいな。
私が協力した事が無駄になるのは嫌よ。
「確かに理由にもよりますよね。
インフルエンザで学校閉鎖になってしまった…とかでしたら、嫌ですもの。」
適当な言い訳を言うと、伊藤は頷いた。
やっぱりおかしい。
私はその後、駅に着くまで伊藤に話しかけなかった。
伊藤も私に話しかけなかった。
少しずつ人が増えていくバスで、話をしないというのは不自然ではないのに、私は居心地が悪いような気がした。
でもそこに行動を起こす前に駅に着いた。
「すいません、伊藤先生。
急いでいるので、お先に失礼いたします。」
私は足早にバスから降りた。
振り返らずに、小走りで改札を通りすぎる。
今なら予定より一本早い電車に乗れるから…家まで伊藤と鉢合わせしなくていい。
私はスピードを上げて、ホームへと続く階段を駆け下りた。
人の波に紛れ込んで、何とか電車の端っこに乗り込む。
電車はいつもの事ながら鮨詰めで…不快だけど、さっきのバスよりはマシだった。
伊藤…本当にどうしたんだろう…復讐の件?それとも家族の問題?
気付けば、電車に乗っている間、伊藤の事ばかり考えていた。