偽りの先生、幾千の涙
「冷めるから、先に食べてから話そうか。」
「…そうですね。」
気になるから先に話してほしいけど、食べ始めた人を止めるわけにはいかず、私は諦める事にした。
それにしても、伊藤の作ったご飯が思いの外美味しくて、少し感動する。
毎日作っていると言っていたが…食べてくれる家族がいると、こんなに上手くなるものなのか。
「ご馳走様でした。」
食べ終えたのはほぼ同時だった。
水を一口飲むと、私は伊藤を見る。
お腹も満たせたし、そろそろ話してほしい。
私が今夜、ここに呼ばれた理由を。
「そんな期待したような目で見るなよ。」
そう言った伊藤の目は、何処を見ているのか分からなかった。
しっかりと私を見ているのに、違うところに目を背けている。
「あら、だって気になりますもの。
散々待たせておいて、期待しない方が無理な話ですよ。」
「期待するような話じゃないぞ。
…君のお父様への復讐日が決まったよ。
明日だ。」