偽りの先生、幾千の涙


それって、つまり…


「明日に、あの人が死ぬって事ですか?」


だとしたら、何が期待出来ない話なのだろう。


やっと終わるんだから…


「いや、少なくとも、榎本悟郎は明日死なない。
…俺の父さんの計画では…死ぬのは君だよ。」


「…は?」


「私、ですか?
父親が殺されて、私も殺されるなら分かるんですけど…私だけですか?」


「そうだ。」


温度のない声が耳朶を刺激する。


どうして…私が死んだところで、あの父親が困る事なんて何もない。


遺書を書かせて、誰かに読ませるように仕向ける?


それ、私が前にやろうとしたやつだけど…マスコミの手に渡れば確実にあいつは痛い目に遭う。


「榎本悟郎の前で、一人娘の榎本果穂を殺す…これが父さんの復讐方法だ。」


「…え。」


聞こえたのは、とても単純明快な方法で、今まで長々と何の準備をしてきたのかと疑うものだった。


そんなのとっくの昔に出来た事ではないか。


何を勿体ぶっていたというのか。


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