偽りの先生、幾千の涙
それに、死んだらあんな奴と関わらなくていい。
一番の大きな原因はあの父親を陥れる事で間違いないけど…そこに些細な事が積もっていった。
しょうもないと言ってしまえば、それで終わりだ。
もっと辛い環境に耐えている人は沢山いるなんて言われそうだが、そんな事は知ったこっちゃない。
私の価値観で選択しただけだ。
こんな事が言えるのも、あの日に伊藤が屋上に来てしまって、死ぬのに失敗したから言えるんだけど。
だから…逆に私は問いたい。
「生きたいと言ったら、どうするんですか?」
楽に死ねた可能性を潰しておいて、明日に生き地獄を味わいながら殺される可能性を私に与えたのは彼だ。
貴方自身のした事、分かってる?
そんなつもりで聞いただけだった。
差し迫った状況だけど、軽く聞いてみただけなのに、伊藤は今までになく真剣に答えるのだった。
「君を逃がすよ。
国内外問わず、榎本果穂って一人の女の子が、これから平穏に生きていけるように、全力を尽くす。」
もし…この言葉を聞いたのが半年前だったら、私はどう思っただろうか。
綺麗事だとか、無理な事言うなって、馬鹿にしていたにちがいない。
絵空事に呆れている自分が目に浮かぶ。