偽りの先生、幾千の涙
「果穂ちゃんの家に行くの久しぶりだな。
今のお家行くの、もしかして初めてかも。」
「そうね…業者の人以外は入れた事ないかも。」
「本当に?
あたしが一番?
やったー!」
高校3年生にもなって、そんな無邪気にはしゃげるものかな。
そんな疑問を抱きながら、私は景色を見ながら家に向かう。
マンションの前に着くと、花音ちゃんは運転手さんに、迎えにきてほしい時に連絡すると言って車を帰らせる。
私たちはエントランスに入り、警備員さんに住人以外の人が入る事の許可を取ろうとした。
その時である。
「えー。
身内って言ってるじゃん。
何がダメなわけ?」
「ですから、身内の方の場合も、住人の方と一緒でないとお通しする事はできないのです!」
警備員さんが、若い男ともめていた。
明るい茶髪に、クラッシュジーンズ…上着はもう見なくても、チャラいのが分かる。
警備員さんに止められるのも無理はない。
「本当に?
見かけで判断していない?
兄さん、まだ仕事から帰ってきてないんだよ。
今日は早く帰れそうって言ってたから、もうすぐ戻ると思うんだけどな…」
これは流石に警備員さんも可哀相かも。
「花音ちゃん、ここで待ってて。」