偽りの先生、幾千の涙


「じゃあ逃がして下さい。
生きてみようと思います。」


逃げてどうなるか分からない。


ここから逃げて、復讐なんて全く関係のない辺鄙な田舎に行くか、それか海外に行くか…そんなところだろう。


同級生の家に保護してもらうという手もあるけど、それだと伊藤の家族…復讐したい人達にすぐに見つかってしまうだろう。


少なくとも、私が伊藤の父親の立場なら、まずはその辺りを探すわ。


それに、私が同級生から慕われているのは私の実力だけど、保護してくれるのは同級生の親になる。


もし父親が失踪した、あるいは復讐の件がバレた際にはすぐに追い出す事も、追い出された瞬間に捕まる事も目に見えている。


それでは意味がない。


伊藤のいう「生きる」は、そんな短いものではない。


「分かった。
それなら俺はその手筈を整える。
何処で落ち着けるか分からないから、持てるだけの着替えは用意しろ。
1ヶ月も同じ服なのは嫌だろ?」


「逃げるって…私を何処か…例えば空港に連れていって終わりとかじゃないんですか?」


「出来ればそうしたい。
それにしても必要だろ?
これからはお嬢様じゃなくて、無一文のただの人だ。
しかもビザなし。
持っていける物は持っていけ。」


「そうですね。
分かりました。
ありがとうございます。」


「あと、明日は普通に登校しろ。
俺との会話を忘れて、普通に過ごせ。
そうだな…明日の18時にここを出発だ。」


明日の18時…荷造りは今日するとして、明日は早くに帰らなきゃね。


あとは…


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