偽りの先生、幾千の涙
いつかこの選択を後悔するかもしれない。
今まで育ててくれた家族を失って、たかが少女一人の命って思う日が来てもおかしくない。
でも今はそんな事思わなかったし、これから先そんな風に思える日が来るとは思えなかった。
だから俺は…
そんな風に思っていたら、タブレット端末が震えた。
父さんからのメールだった。
見てみると、地図が載っていた。
ここに連れて来いという事なのだろう。
なるほど、病院の跡地がよく見えるビルか…復讐するのにピッタリな場所だ。
それから…本文にはこう書いてあった。
『優はここに、榎本果穂を連れてきたら、帰りなさい。
間違っても、立ち会おうなんて思わないように。
大丈夫だ、今日で全てが終わるから。
長い間、巻き込んで悪かったな。』
デジタルで表示された文字がこんなにも虚しいと思ったのは初めてだった。
味気もないし、リアリティもない。
俺はそのそのメールを削除しようとしたが、消さなかった。
無機質なそれが、家族との最後のやり取りだと思った。
だから俺は返事をした。