偽りの先生、幾千の涙


俺は真っ直ぐに家に帰ると、駐車場で車の点検をする。


何も問題がないと分かって、家に帰った。


まだ日が高いせいか、玄関の扉を開けても部屋が明るかった。


自分の家ってこんな感じだったのかと、今日になって思った。


俺は電気を付けずに、必要な段ボールを台車に乗せていく。


必要そうなもの…そうだな、これからどんな生活が待ってるから分からねえし…必要最低限のものを揃えて、大型の中古車へと運んだ。


それを2回繰り返していたら、約束の時間はもう目の前だった。


時計を見た瞬間、俺はそわそわと家の中を歩き回った。


落ち着きのなさに自分で呆れながら、俺は鞄の中を確認する。


スマホにタブレット、持てるだけの金が入った財布と…ありきたりなものばかりが入っている。


俺はタブレットを取り出して、電源を入れてみる。


父さんからの返事はなかった。


父さん、もう準備は進んでいるんだろうな。


俺は目を背けるように、電源を切って、鞄の中へと戻す。


それが6時になる10分前で、今度は目を背けられない現実が俺の背中に語りかける。


もう遅いのだと。


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