偽りの先生、幾千の涙


「原因は…不明ですね。
どうしますか?」


「そうだな…他に国際線のある空港は…ダメだ、時間がかかる。
となると…」


考えろ、俺。


今ならまだ時間がある。


この子を安全なところへ…安全な場所って何処だ?


こんな綺麗な顔の子、何処に行っても目立つ。


「逃げるか。」


「え?」


「逃げるぞ。
何処までも遠くに。
空港は一つじゃねえんだ。
世界各国の飛行機が集まる空港なんて幾つもある。
それの何処かに辿り着ければいい。
悪いけど、それまでは俺と逃避行だ。」


ここで諦めるような覚悟は持っていない。


この子を必ず見送るんだ。


父さんが復讐を諦めてくれたらいいが…数日以内になんて事はない。


ならば遠く、父さんに邪魔されない所まで。


「待って下さい。
逃げるって…何処まで行くつもりなんですな?
空港は確かに沢山ありますけど、そこの空港が動くまで待てば…」


戸惑う彼女の言う事は正しい。


例えば、ここが何日も閉鎖されたままなんてありえない。 


でも、このまま待つのは得策ではない気がした。


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