偽りの先生、幾千の涙
「確かにそうだけど、でも移動した方が危険だ。
本来なら俺達はとっくに父さんのところに着いているはずだ。
でも着いていない。
何かに巻き込まれたか、裏切ったかの2択だ。」
そして父さんなら、まず事故が起きてないかを調べる。
でも俺の通り道で起きているとは考えられない。
なら、次に考えられるのは、俺が裏切った可能性だ。
「逃げなきゃいけないんですね。」
榎本果穂は諦めたように窓に頭を預けた。
「ああ。
約束だ、少なくともこの国を出るまでは俺が守ってやる。」
「お願いしますよ。」
「ああ。」
俺はまた車を走らせる。
途中でUターンして、元来た道へ。
あーあ、こういう時にカーナビ使えねえのは不便だな。
でもGPSが装着されている機械の電源なんて入れられねえし、我慢するしかない。
それもこれも、この子とお別れするまでの我慢だ。
ある程度走った後、東京はもう出たのかもしれない。
気付いたら山道を走っていて、後ろを見ると榎本果穂は眠っていた。
時計を見てももう夜中だった。
俺も適当に車を停められそうなところに停めて寝るか。
ポツポツとしか灯りのない中、俺はゆっくりと車を停めた。