偽りの先生、幾千の涙
side by 海斗
「だりいな。
俺も現場見たいっつーの。」
文句を言いながら、俺は家でゴロゴロしている。
今日はあの日だ。
全部が終わる日、普通に戻れる日
結局、父さんは俺を仲間には入れてくれなかった。
どころか家から一歩も出るなって言われて、遊ぶ事さえ出来ない。
でもこれもあとちょっと、明日になれば自由だ。
この家にいられるかは分からねえけど、兄さんも帰ってくるし、また元通りだ。
…きっとあの頃に戻れる。
父さんから電話が掛かってくるまで、俺はそう信じていた。
スマホが鳴ったのは、俺がゲームしてる時だった。
結構必死に敵を倒している時なのに、中断せざるをえなかった。
それでも俺は文句言わずに電話に出た。
あの極悪人もその娘も両方死んだ、そんな連絡だと思ったからだった。
なのに、スマホから聞こえてきたのは父さんの切羽詰まった声だった。
「海斗、優から連絡入ってないか?」
「兄さんから?
来てねえけど。」
「…本当か。」
「ああ。
何にも来てねえけど、何かあったのか?」
「優が来ないんだ。
いつまで経っても、あの娘を連れて来ない。」