偽りの先生、幾千の涙


「は?」


俺は父さんが何を行っているのか理解出来なかった。


兄さんが来ない?


「意味分かんねえんだけど。
来ないし、連絡ないって事?」


「ああ。」


父さんの短い返事を聞いて、俺は考える。


情が移った?殺すのが怖くなった?…まさかな。


「とりま俺からも電話してみる。
因みにあいつは?
榎本悟郎は?」


「縛り上げて睡眠薬飲ませた。
今は寝てる。」


「そうなのか。
分かった。
後でまた連絡する。」


俺は電話を切ると、兄さんにすぐ電話した。


だが出ない。


電源切ってるかもって言われて、他の端末にも連絡してみたけど無理だった。


事故に巻き込まれた可能性もあるから、兄さんの仮住まいから今日の復讐の舞台までの間に何か起こってないか調べたけど、大きな事故は起きていない。


「…マジかよ。」


さっき消した可能性がむくむくと育っていく。


兄さんが裏切った?


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