偽りの先生、幾千の涙


それからドカドカと色んなものが聞こえてきた。


最後に聞いたのは、ドアが乱暴に閉まる音だった。


家は急に静かになり、俺は逆に怯えた。


何が起こったか全く分からない。


分からないから、トイレから出るのが怖くて、俺は暫くそこから出なかった。


暗いとはいえ一応トイレだから排泄には困らなかったし、床に座れば寝れるから、慌てて出る必要もなかった。


でも何時間そこにいたか分からないが、動いていないとはいえ腹は減る。


俺はそこから出る覚悟を決めた。


ドアをそっと開けて、辺りを見渡す。


二人とも寝てるから静かなだけで、起こしたら今度は俺が怒られる番だ。


そうしたら飯どころじゃなくなるから、そっと台所まで行く。


でも父親も母親もいない。


家中何処にもいないと分かった俺は、椅子の上に乗って冷蔵庫を開けて食べれそうなものを出して食べた。


初めて一人で何かを食べた。


味気ないけど、安心して食べる事が出来た。


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