偽りの先生、幾千の涙


何日経っても、二人は帰って来なかった。


俺は特に困らなかった。


何かしら食べるものはあったし、いつ、どれだけ寝ても、テレビを見ていても怒られなかった。


流石にこの状況で外で遊ぶ事は出来なかったけど、俺は存分に一人暮らしを満喫していた。


だがそんな日々にも終わりが来た。


朝に子供向け番組をぼーっと見ていた時の事だ。


ちょうどCMに入ったところで、インターホンが鳴った。


俺はビクビク震えながらテレビを消した。


父親と母親が帰ってきてしまった。


怖くなった俺はテレビの前で寝ているフリをした。


でもインターホンは何回も鳴り、ドアは一向に開かない。


俺はその音を無視し続けた。


そして願った。


もう帰って来ないでほしい、このまま一人になりたいと。


でも暫くして、ドアが開く音がした。


玄関から風が入ってくる。


俺はぎゅっと目を瞑り、必死になって狸寝入りを続けた。


でもその直後に俺は起き上がる。


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