偽りの先生、幾千の涙
「海斗君?海斗君いるかな?」
知らない大人の声がした。
優しそうな声だった。
目を開けると、何人かの警察官が俺のことを見ていた。
「海斗君だね!
無事で良かった。
…いきなり、ごめんね。
おじちゃん達と一緒に来てくれるかな?
お父さんとお母さんの事で話があるんだ。」
俺はてっきり警察に行くと思い、頷いた。
でも行った先は病院だった。
わけの分からないまま検査されて、注射されて、点滴もついてベッドで寝かされた。
栄養失調たからこんな事になったわけで、当時の俺がガリガリに痩せていたのを見て、警察は俺を病院に連れていったと後で知ったが、そんな事は分かるはずもない俺は違う意味で不安な日々を過ごしていた。
数日後にまた警察の人が来た。
そして俺は説明をした。
母親があの日に病院に運ばれた事、父親が病院に付き添った事、その病院で爆発事故が起こった事、二人が死んだ事、引き取り手がいないから施設で生活する事になる事
流石に混乱したけど、俺は安心した。
これからは普通に飯も食えるし、寝れるんだって思うと、その方がいいかもって。
10日程経ち、俺は今までにないくらい元気になって、退院した。
でも俺はそこでも地獄を見た。