偽りの先生、幾千の涙
痩せ細った状態で施設に入った俺は周りの奴に虐められた。
殴り返そうとしても、ひょろひょろの俺が一人で立ち向かったところで、年上を複数人相手するのは難しかった。
施設の大人も子供の喧嘩にまで手が回らなくて、俺は元の家と大して変わらない気持ちだった。
そんな生活がどれぐらい続いたか覚えてねえけど、ある日、俺を引き取りたいって人が施設にやって来た。
その日は凄く寒くて、誰の息も真っ白だった。
暖かい応接室で、俺は初めて父さんに会った。
最初は胡散臭いおっさんが来たと思った。
俺なんか引き取って何がしたいのか分からなかったし、ろくでもない奴がまた増えたぐらいにしか思ってなかった。
施設の人は二つ返事で俺を父さんに引き渡し、父さんが来た翌々日に俺は施設を出る事になった。
そんな急で大丈夫かと父さんは施設の人に言ったが、軽く大丈夫と奴らは言った。
俺の顔を一瞬たりとも見なかったのにだ。
逆に父さんが心配そうな顔で、明後日でいいか、そもそもうちに来てもらっていいのかって聞いてきたっけ。
俺は俺で一度頷いただけだった。
ここにいたって虐められるだけだから未練はないし、もう少しマシな暮らしが出来るかも知れないと思った。
今思えば、父さんは俺の意思を確認してくれた初めての大人だったから、少しは期待したのかもしれない。
そうして俺の新しい生活が始まった。