偽りの先生、幾千の涙
初めて家に連れていかれた時、俺はピリピリしていた。
家に向かう際、父さんは俺に話しかけてくれたが、一切答えなかった。
大人のやり口には乗らない、そんな感じだった。
家に着いてからも変わらなかった。
小さくて古い家だったが、掃除が行き届いていた。
「優、ただいま。
弟を連れてきたぞ。」
父さんは玄関に入るなり、とても嬉しそうに言った。
靴も脱いでない俺をひょいと抱き上げ、リビングに運んで行く父さんは、外にいる時とは別人だった。
大人なのに、子供みたいだった。
俺はぬいぐるみじゃないぞと思ったが、純粋な眼差しの父さんに唖然としてしまい、何も言えなかった。
リビングには宿題中の兄さんがいた。
兄さんは状況を飲み込めなかったのだろう。
目をパチクリさせて、俺をマジマジと見ていた。
「弟ってマジだったのかよ。」
「本当だって。
父さん、優に嘘吐いた事ないだろ?」
「いや、レベル違いすぎだろ。
っつか何で靴履いたままなんだよ。
脱がせてやれよ。」