偽りの先生、幾千の涙
くるっと180度回転して、玄関にダッシュした。
次は何処に拾われるか分からない、ここが一番マシかもしれない。
でもやっぱりここも信用出来ない。
急いで靴を履き直した。
何処行くんだよっていう兄さんの声は無視した。
もうすぐ何とか外に行けると思った。
なのに無意味だった。
「優、止めなさい。
海斗も知らない家に急に住む事になって、緊張とか不安でいっぱいなんだ。
ほら、海斗も。
外に遊びに行くのは明日からにしなさい。
今日は疲れてるし、もうすぐ夕方だ。」
父さんは再び俺を持ち上げる。
靴を脱がして玄関に置くと、俺は3度目のリビングに行った。
リビングにあるものをじっくり見る。
特に変わったものはない。
テーブルと椅子が3つ、テレビがあって、食器棚があり…それだけだ。
小さくてシンプルな部屋だった。
「優、この子は海斗。
優と同じで海斗のご両親も事故で亡くなったんだ。
昨日までは孤児院にいたけど、今日から俺達の家族だ。
仲良くしてやってくれ。
海斗も、今日からここが海斗の家になるんだ。
何も心配いらないよ。」
父さんは俺を下ろすと、選択を取り込まないといけないと言って、ベランダに出た。