偽りの先生、幾千の涙
楽しかった。
嫌な事も怒られる事もあるけど、理不尽に殴られる事も虐められる事もない。
父さんも兄さんも本当に優しくて、家族って暖かいんだって思えた。
こんな日々が続くと思っていた。
でも変わってしまった。
父さんがあの事故の犯人に復讐したいと言った。
巻き込みたくないと父さんは言ったが、兄さんも加担する事になった。
俺も加わる事にした。
だって今の家族と離れたくないから。
でも正直、復讐とかどうでもいい。
だって榎本悟郎って奴が病院を爆破してくれたおかげで、俺は父さんと兄さんに出会わなかったから。
あのまま栄養失調かDVで死んでいたかもしれないと考えると、寧ろ恩人と言っても過言じゃない。
だけど、父さんと兄さんは違う。
元の家族を愛していた、だから憎い。
その気持ちが間違っているとは思わない。
俺だって、父さんと兄さんが殺されたら、同じ事をするだろう。