偽りの先生、幾千の涙
となると、俺に残された選択肢は一つだけだ。
安全になるまで、この子を守る。
「さて、どうしたものか。」
未だに夢の中から帰ってこないお嬢様の寝顔をじっくり見た。
顔写真も公開されてる事だし、車から出すのは難しい。
暫くは狭い車の中で我慢してもらわないと。
そんな事を考えていたら、彼女の顔が微かに動く。
数秒と経たない内に、瞳がゆっくりとこちらに向けられた。
「お目覚め?」
話しかけてみるも、彼女は返事をしない。
周りをキョロキョロと見て、状況を確認する。
「私…寝ちゃったんですね。」
「ああ。
昨日の事、ちゃんと覚えてる?」
「はい。
眠ってしまうまでは。」
榎本果穂の顔から眠気が消えていく。
頭もきちんと回っているようだ。
話さないといけないと、俺はもう一度スマホを取り出す。