偽りの先生、幾千の涙
俺が一通り説明している間、榎本果穂は何も言わなかった。
相槌もなければ、表情も動かない。
この報道を流したのは榎本果穂自身なのかと疑う程だった。
俺を信用していなくて、俺を警察に突き出すためだろうか?
いや、もしそうならもっと細かい情報も出ているはずだ。
ニュースを見る限り、車に関する事やどの方面に逃げたかまでは書いてない。
本気で俺から逃げたいなら、こういった情報も既に出ているはずだ。
「何でこんな事に?」
「俺が知りたいよ。
しかもご丁寧に犯人だろ?
間違ってねえけどな。」
「そんな事言ってる場合ですか!?」
珍しく、大きな声を出す榎本果穂に俺は目を丸くした。
あのニュースよりよっぽど驚いた。
「こんな事言ってないと、やってられないだろ。
あながち間違いでもねえし。」
「…間違ってますよ。」
今度は逆に、蚊の泣くような小さな声が聞こえる。