偽りの先生、幾千の涙
「だって優さんは…私のこと助けてくれようとしてるじゃないですか。」
「…」
その言葉に、俺は何も言えなくなった。
この子の言う通りだ。
助けるために、あそこから離れた。
でも同時に分かっている。
元はと言えば、俺達が復讐しようなんて言い出したからだ。
この子は何も悪くなかったのに、同じ苦しみを榎本悟郎も味わうべきだと言って、今に至る。
この子の言う通りだけど、言う通りではない。
あんな報道が出たのも、彼女が巻き込まれたのも、全て俺のせいだ。
だから、俺は責任を全うしたい。
「そんな風に思わなくていい。」
「でも!」
「巻き込んだのは俺だ。
そうだろ?
本当なら君はあの学校で、あの家で、今まで通り生活していたはずだ。
でもこうなった。
俺が現れなかったら、平穏な生活が待ってたんだ。
退屈で、嘘の笑顔にまみれた生活だけどな。」
それでも、こんな危ない生活するよりマシだろ?